RYOMA

高知家ビジネスプランコンテスト(イノベーション部門)

高知県の事業家にインタビュー

山本貴金属地金株式会社 山本会長 インタビュー

今回は高知県で事業を展開されている山本貴金属地金株式会社(以下、ヤマキン)会長 山本様に、高知県での事業展開の特徴についてインタビューさせていただきました。

ヤマキンは大阪で創業し、1991年に、様々なサポートを受け高知県で事業を展開しました。今となっては地域を代表する企業の一つになっています。その取り組みについてお話を伺ってみたいと思います。


まずヤマキンさんがどのような事業を展開されているか教えていただけますでしょうか?

元々は貴金属の売買・製造加工を行う会社でしたが、様々な環境変化に対応するために歯科医療材料に事業ドメインを再定義したことから、セラミックスや樹脂関係の素材なども扱うようになりました。ですから、現在は素材を問わない歯科材料総合メーカーです。また元々は歯科技工士の方々が手作業で製作していたやり方が、現在はデジタル化されてきて、CAD / CAMを使って削って作るという形に変わってきています。それに対応する材料を扱ったり、技工士の環境を整える活動も実施していますね。

どのような経緯で高知県で事業を展開されるようになったのでしょうか?

ちょうどバブルの頃。当時はまだ社員も16~7名しかおらず、本社も50坪くらいの広さでしたね。当時、このまま何も変化させずにビジネスを継続させていると、そのうち難航するだろうと、そんな予感があったんですわ。

そんな時に思い出したんです。実は、私の本籍は高知県で、先代から「何かあったらここに工場を建てぇ」と言われていた農地があったんですね。
そこには建てられなかったのですが、県庁が工業団地の企業誘致をやっているということで話をしに行ったら、土地の価格や県のサポートについての利点もあるということがわかって、高知県で展開することにすぐ決めましたね。

 

-県のサポートは実務だけでなく、心理的な自信にもなる-

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高知県からはどんなサポートがありましたか?

県が色々とやってくれましたねぇ。大きいところでいうと、人材ですよ。県の職員の方が人材募集のために高校からどこから、色んなところを一緒に回ってくれますからね。当時は一人も来ませんでしたが(笑)。
同行してもらうと、零細企業だから敷居が高いという負担感が薄れるでしょ。「うちみたいな小さいところが」と思っているものが、県のサポートがきっかけで「行きましょうよ」となる。

いつも言っているのですが、「地方の利点を見つけ出す」ということは大事ですよ。
例えば高知だと検査機器などは順番待ちせずに、次の日でも借りることが出来たりするんです。これは、地方の優位性ですねぇ。いまだに工技センターや大学、関係機関で機械を借りてお世話になっています。

-大学との連携によって、ビジネスに足りないパーツを埋めていく-

高知大学との連携も行っているとお聞きしましたが、どのような取り組みを実施されているのでしょうか?

これはここだけの話、かれこれ20年かけた仕掛けがあるんですよ。

20年!?どんな取組みなんですか?

たとえば貴金属の材料は成形しやすいし、融かすのに熱を加えるので衛生的にも良いでしょ、ただし、相場が動くのでリスクのある材料です。
気をつけなくてはいけないことは値段が高い、安いと言った価格競争の世界に入ってはいけないということです。そんなアホらしいことをやってられない。とはいえ選んでもらうためにどのように付加価値をつけるべきかということを考えたんですわ。

そもそも我々が扱っているのは歯科材料なので、人体に使うものです。業種に関わらず安全性が問われる時代でしょ。付加価値を考えたときに”安全性”の観点から、生体的な部分でエビデンスを作ったら良いんですよ。そんな時に「高知大学の医学部あるやないの〜」とひらめいたんですね。
そこから高知大の医学部と一緒に安全性のテストに取り組みました。はじめるまでいろいろな苦労もありましたけどね。

話は変わりますが、近頃ではヤマキンの社員らが、高知県内の大学で時々授業をさせてもらっています。高知県の大学生にはこうした取り組みを通してヤマキンを知ってもらいリクルートにもつながっています。

 

-実のところ地方は、若い人の才能を活かす機会が溢れている-

高知県ならではの優位性は他にどんなことが挙げられますでしょうか?

何と言っても人材ですね、人材。うちはパンフレットやコンセプトムービーのような動画も全て自社で作成してるんですよ。これは高知県の専門学校を出て名のある大会で入賞し、海外でも通用する社員がつくっています。また、ムービー制作担当には、東京で映像作品のプロデュースをしていた社員もいるんですわ。このような人材を都心部で集めようと思うと、人が多い分、人材の質もまちまちでそれを取り合うライバル企業も多いから、採用がものすごく大変でしょ。高知だとそういう人材に一度来ていただくと、他の優秀な方も呼び寄せて次々と優秀な方が集まってくるんです。
実は地方は、才能と熱意があれば本当にやりたいことを若くしてやれる。むしろ都心でやるよりも、無駄な競争や修行期間のようなものに縛られない分、どんどん実力を伸ばしていけると思いますね。実のところ地方っていうのは、若い人の才能を活かす機会が溢れているんですよ。でしょ?

あとは私自身もそうですが社員に学位を取ってもらっていますね。社内に博士会という学位を持つ10名ほどのグループがあるのですが、そのうち半分が入社してから大学院に入り、働きながら学位を取った社員です。仕事以外の視点から学べるので、視野が広がりますし、あとはネットワークや人脈形成にも繋がっています。これまでの経営を振り返ってみると、経済学の理論にすべてあてはまったんです。過去のことが教科書に書いているんだったら、未来のこともわかると思います。実際に、いまヤマキンを取り巻く環境は、当時大学院で学んだ「技術の不連続」や「イノベーション」の真っ最中なんです。

 

-地方への展開は一朝一夕にはできません-

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高知県に展開する際に苦労したことなどはありますか?

地元に定着して応援されるようになるには、時間がかかります。地元住民との対話をしたり、地域での活動を継続的におこなったりすることが必要です。これについては徐々に浸透させていくしかないですね。

地域活動をいろいろと取り組んでいますが、最近では入社4年目の社員がみずからよさこい祭の企画を持ってきたんです。で、「これどういうコンセプト?」と聞くと「会社の宣伝になります。」と言う。
でも私は「いや、これは目的を変えた方がいい」と言ったんですよ。
つまりプロモーションといってもすぐに忘れられてしまうので、社内的なコミュニケーションや地域の方を含めた交流として実施した方が良いと考えたんですね。こんな風に社員がやりたいと考えたことを、ベストな形でなんとかやらしてあげたい、それを機会に成長してもらいたいと思っていますし、地域とも積極的に連携していきたいと思っています。

 

RYOMAにエントリーする方へ向けてメッセージをお願いします。

人生の在り方を見つめることが大事。つまり自分は何がしたいかですわ。自身の哲学を持つことなんです。それは都会であろうと自然が多い地方であろうと変わらない。シリコンバレーでも高知でもチャレンジする姿勢は同じこと。

実際起業をするということはストレスがめちゃくちゃたまるんですよ。いろいろな所で摩擦が起こるたびに孤独を感じるもんです。で、そうした時に、自分との極限の戦いをどこでやりたいのかということですわ。
高知に来れば周り全部自然ですからね。もんのすごい心癒されますよ。IターンやUターンが盛んに叫ばれているのもわかりますね。

経営者というものは常に仕事のことを考えていないといけません。普通の会社員なら旅行で息抜きをできますが、経営者っていうのは旅行で済ませたらあかんのです。
膨大なストレスと向き合っていても常に心を落ち着かせていないとあかんのですよ。


山本 裕久 山本貴金属地金株式会社 代表取締役 会長%e3%83%a4%e3%83%9e%e3%82%ad%e3%83%b3%e4%bc%9a%e9%95%b7

略歴
1975.3 近畿大学 理工学部 金属工学科 卒業
1975.4 山本商店(現:山本貴金属地金株式会社)入社
1976.7 専務取締役 就任
1979.7 代表取締役社長 就任
2001.3 高知工科大学大学院 工学研究科 修士課程 修了
2007.10 代表取締役会長 就任
2011.3  高知工科大学大学院 工学研究科 博士課程 修了

学位論文
中小製造業の進化のための戦略モデル-山本貴金属地金㈱第二創業の事例-

関連研究業績
・星川武、 山添正稔、 田中秀和、 清水悟、 山本裕久、 安楽照男

「低融性歯科用リューサイト質陶材 (ガラスセラミック)の開発―熱膨張係数と透明度の安定性」

歯科材料・器械、 25、 479-487、 2006.

・田中秀和、 星川武、 山本裕久、 安楽照男

「市販金属焼付用マージン陶材における歯科理工学的諸性質の比較検討」

日本歯科技工学会雑誌、 24、 102-109、 2003.

・野口美奈子、 田中秀和、 星川武、 山本裕久、 安楽照男

「市販金属焼付用陶材の色調と色調調製用陶材の開発」

日本歯科技工学会雑誌、 24、 96-101、 2003.

・平成19年度高知県特別県勢功労賞 (2007)

一言
基盤工学における専門知識を生かして、過去、現在を通じ、未来へと進むべき成長戦略課題を研究することで生まれるマネージメントを業界発展の為の一助としたい。